2013年8月28日|神戸 靖一郎|一般民事
最近、名誉毀損ツーリズムという言葉を知りました。
http://en.wikipedia.org/wiki/Libel_tourism
イギリスの名誉毀損法制が被害者に著しく有利なことから、外国からわざわざイギリスの裁判所まで行って名誉毀損の訴訟を起こすことを指しているようです。
イギリスの名誉毀損法制は日本と似ているとのことなので、(おそらく)原告は名誉毀損の外形的事実を指摘すればよく、被告が名誉毀損の免責要件(日本では、①事実の公共性、②公益目的、③真実性の3要件)を主張・立証しなければならないとしているのでしょう。
さらにイギリスでは、敗訴者が原告の弁護士費用まで負担するので、被告の不利益は甚大です。
http://www.comit.jp/uk/cost.htm
なお、日本では訴訟費用の負担で済みます。訴訟費用は大きな額にはならず、費用対効果の関係で、実務上は、請求しないままのことも多いです。
つまり、被告は名誉毀損の訴訟を提起された時点で経済的に高いリスクにさらされることになります。
こうした法制の場合、敗訴リスクが多少でもあるならば、被告は、判決まで戦うよりも、早期の和解を選択するのが合理的です。
以上の事情からイギリスは名誉毀損の被害者に著しく有利と言われるようです。
名誉毀損ツーリズムもフォーラムショッピング(自分に有利な判決が見込める裁判所に訴訟を提起すること。)の一つです。
アメリカなどでは、分野ごとに有利な裁判所が決まっているようで、どの裁判所を選択するかは勝敗に重大な影響があるようです。
フォーラムショッピングが可能になるのは、訴訟提起できる裁判所(これを管轄裁判所といいます。)を多数選択できることが条件です。日本では管轄裁判所の選択肢が広くないので(民事訴訟法訴訟4条~13条に規定があります。)、あまりフォーラムショッピングの重要性は強調されていません。
それでもフォーラムショッピング的考慮をしないわけではありません。
たとえば、交通事故の損害賠償請求事件の場合、管轄裁判所は、原告の住所地、被告の住所地、交通事故の発生地を管轄する裁判所になります。
専門部がある東京地裁、名古屋地裁、大阪地裁で使用する損害賠償の基準が異なっています(東京は赤い本、名古屋は黄色本、大阪は緑の本)。損害賠償の基準は単純にあてはめればいいようでいて、あてはめ方にもちょっとしたノウハウがあり、あまり詳しくない基準で訴訟を戦いとは思いません。そのため、管轄裁判所に東京地裁があればそこに決めますし(事務所も近いですしね。)、東京地裁がなければ慣れ親しんだ赤い本を使っている裁判所か交通専門部のある裁判所を選びます。
« 前の記事:正義を実現する評決が…-「評決」(シドニー・ルメット監督、1982年)(3)
次の記事:弱者が強者に打ち勝つとき-「評決」(シドニー・ルメット監督、1982年)(4) »
ブログ一覧に戻る