「著作権法」入門【第2回】

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3 産業財産権法とは

(1) わが国の現行の産業財産権法(旧称・工業所有権法)に共通する原理は以下の通りです。

ァ  権利主義  国家の恩恵によって権利が付与されるのではなく、知的な創作を行った者が、権利として付与を請求できるという主義(知的な創作とは無関係の商標法を除く)(vs.恩恵主義)

ィ  先願主義  同一発明等が競合した場合、先の出願者に権利が付与されという主義(vs.先発明主義)

ウ  審査主義  国家の審査により、一定の要件を満たす出願についてのみ権利を付与するという主義(実用新案法を除く)(vs.無審査主義)

エ  登録主義  登録によって権利が発生するとする主義(vs.無方式主義)

(2) 産業財産権法と登録制度

以下、わが国の産業財産権法に共通する登録制度を、「特許」制度を例に概観します。
工業所有権法研究グループ編「知っておきたい特許法」(㈱朝陽会)は、1980年に特許庁関係者によって刊行された産業財産権法の概要を示す手頃な入門書です。以下の記述では、同書の対応ページを示しますのでご参照下さい。

ァ 出願
特許を得るためには、発明をした者などが特許庁長官に文書(願書)で出願することが必要です。願書には、「明細書」、「特許請求の範囲」、必要な図面などを添付します。「明細書」は、「発明の詳細な説明」を記載したものでなければなりません(法36)。

ィ 出願公開
特許庁長官は、出願から1年6月後に出願内容を公開します(法64)。この制度は、出願件数の増大が審査の遅延を招き、出願された発明の公表が遅れることによって、重複研究、重複投資という社会全体から見た弊害が生ずることから、これを除去する目的で1970年に設けられたものです。  
公開があった後に第三者が「業として」その発明を実施したときは、出願人は、設定登録を受けた後、その第三者に「補償金」の支払いを請求することができます(法65)。

ウ 出願審査の請求
出願の審査は、陳腐化した出願や誤算的出願など独占的権利を付与する必要のない出願についての無駄を省くことを目的として、出願人からの審査の請求を待って行われます(1970年改正によるもの―法48の3)。

エ 審査 「特許庁審査官」による審査事項は、次のとおりです(法29)。
・ 発明、すなわち自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものであるかどうか。
・ 産業上利用できる発明であるかどうか。
・ 新規な発明であるかどうか。
・ 進歩性を有するかどうか
・ すでに世間で知られた技術から容易にその発明をすることができるものであるかどうか。
・ 他人より先の出願であるかどうか。

オ 拒絶理由の通知
審査官が拒絶理由を見出したときは、拒絶理由が出願に通知されます。補正などにより解消されれば、特許査定がされ、解消しない場合には、拒絶査定がされます(以上の手続につき、「知っておきたい特許法」図表4(p18)参照)。

「著作権法」入門【第1回】

はじめに
 私が著作権に関する法律実務に携わるようになって、30年以上が過ぎました。その間、何度か、著作権事件の最高裁の法廷に立った経験もあります。
5年前からは、浜松市の静岡文化芸術大学の大学院で、著作権法を中心とする知的財産権法の概論の集中講義を担当するようになり、また、10年ほど前には、武蔵野美術大学で著作権法講座の非常勤講師を数年間務めております。
 民法などの基本法すら学んだことのない院生や学生に著作権という専門化された領域に関する法律を理解させるのは、予想外に難しく、司法研修所や弁護士会で著作権の最新判例の話をする方がはるかに気楽であることが分かりました。
 今回の当事務所のホームページでの「著作権法入門」の企画は、これまでの経験を生かし、法律の「素人」の方々に著作権とは何かという基本的な知識を得ていただこうとするものです。内容が平易であることを心がけますが、「質」を落とすことなく、大学の講義録を下敷きにしながら最先端の話題にも触れてみるつもりでおります。 
みなさんと一緒に著作権法と現代社会との係わり合いについて考える場とすることができれば幸いです。

第1 知的財産権の概要
1 知的財産権とは
 著作権は、知的財産権の一種です。知的財産権とは、A「人間の精神的創作活動によって生じた発明、考案、デザイン、コンピュータ・プログラムや、小説、絵画、音楽のような創作物」と、B「商標、商号のような営業活動における標識」に関する権利の総称です。cf. 図表1:「知っておきたい特許法」19訂版 p3
 Aに属する権利には、発明に関する特許権、考案に関する実用新案権、デザインに関する意匠権、創作的表現に関する著作権などがあり、Bに属する権利には、商標権などがあります。Aに属する権利の中の特許権、実用新案権、意匠権およびBに属する商標権は、権利の発生・取得のために国(特許庁長官)に対する出願~登録の手続きを要し、産業財産権(かつての工業所有権)と呼ばれます。Aに属する権利の中の著作権は、権利の発生・取得のために出願~登録その他の一切の手続きを要しないもので、産業財産権ではありません。

2 知的財産権法とは
 Aに属する法律として、特許法、実用新案法、意匠法、著作権法などがあり、Bに属する法律として、商標法などがあります。なお、Bに属する法律として、不正競争防止法があります。同法は、知的財産に関する具体的権利を定めるものではなく、出願~登録その他の手続きの有無にかかわらず、「営業活動における標識」の不正な使用などを規制するもので、知的財産権法の側面を有するものです。(続く)