ポルノ映画論(上)

このところ、映画をよく見ます。3月だけでも、「名張毒ぶどう酒」殺人事件の再審請求を扱った仲代達矢主演の「約束」、アメリカ・メイン州の小島に残された老姉妹の孤独を描く「8月の鯨」、大島渚追悼「戦場のメリークリスマス」と「愛のコリーダ」…。かつては見ようともしなかったジャンルに属する、サド・マゾ作品の檀みつ主演「私の奴隷になりなさい」、強烈なviolence映画「Hobo with the Sho-tgun」なども最近は鑑賞の対象です。 その理由は単純で、私が2009年9月から映画倫理委員会(映倫)の委員に就任したからです。先輩委員には、財界切っての“映画通”桜井修・三井住友信託顧問や、憲法学の権威・樋口陽一先生(東大名誉教授)がおられ、映倫試写室で見るもの以外に、委員の間で話題になった作品になるべく接することを心掛けています。

このコラムは、映倫委員としての感想も踏まえながら、「映画と法」に関する話題を紹介するもので、映画(周辺領域のDVD、動画、ゲーム画像などを含む)の著作権の話が中心になるはずです。しかし、重厚・華麗なpornographyともいうべき「愛のコリーダ」の印象が抜けきらないため、まず、一昨年、「巨乳若奥様 ねっとり誘惑エッチ」など4本のアダルトDVD(本件DVD)の販売業者に対し、わいせつ図画(トガ)販売(刑法175条)・同幇助の罪で有罪判決が言い渡された事件から始めることにします(詳しくは、日本商事仲裁協会・月刊「JCAジャーナル」2011年11月号の拙稿をご参照下さい)。

東京地裁2011年9月6日判決(河合健司裁判長)の事実認定によれば、本件DVDの映像内容は次のようなものです。 「本件DVDは、その映像内容を見ると、いずれも男女の性交、性戯等の場面が露骨かつ詳細に描写されている。しかも、性器自体や性器の結合状態等にはいわゆるモザイク処理が施されているものの、そのモザイク処理がきわめてきめ細かい(いわゆる「薄い」)ため、性戯の場面等では、性器の形状等を如実に認識することができ、また、男女の性交場面では、性器の結合状態を詳らかに見て取ることができる。」 たしかに、私が映倫事務局から借り出し、自宅で家族に隠れて「鑑賞」したかぎりでは、「巨乳若奥様 ねっとり誘惑エッチ」などの映像は、全体の映像時間の約90%が「性交、性戯等の場面」であるなど、「ハード・コア・ポルノ」(「本番を見せるポルノ」の意―ただし本判決はこの語を使用していない)の範疇に属するものです。

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