「著作権法」入門【第1回】

はじめに
 私が著作権に関する法律実務に携わるようになって、30年以上が過ぎました。その間、何度か、著作権事件の最高裁の法廷に立った経験もあります。
5年前からは、浜松市の静岡文化芸術大学の大学院で、著作権法を中心とする知的財産権法の概論の集中講義を担当するようになり、また、10年ほど前には、武蔵野美術大学で著作権法講座の非常勤講師を数年間務めております。
 民法などの基本法すら学んだことのない院生や学生に著作権という専門化された領域に関する法律を理解させるのは、予想外に難しく、司法研修所や弁護士会で著作権の最新判例の話をする方がはるかに気楽であることが分かりました。
 今回の当事務所のホームページでの「著作権法入門」の企画は、これまでの経験を生かし、法律の「素人」の方々に著作権とは何かという基本的な知識を得ていただこうとするものです。内容が平易であることを心がけますが、「質」を落とすことなく、大学の講義録を下敷きにしながら最先端の話題にも触れてみるつもりでおります。 
みなさんと一緒に著作権法と現代社会との係わり合いについて考える場とすることができれば幸いです。

第1 知的財産権の概要
1 知的財産権とは
 著作権は、知的財産権の一種です。知的財産権とは、A「人間の精神的創作活動によって生じた発明、考案、デザイン、コンピュータ・プログラムや、小説、絵画、音楽のような創作物」と、B「商標、商号のような営業活動における標識」に関する権利の総称です。cf. 図表1:「知っておきたい特許法」19訂版 p3
 Aに属する権利には、発明に関する特許権、考案に関する実用新案権、デザインに関する意匠権、創作的表現に関する著作権などがあり、Bに属する権利には、商標権などがあります。Aに属する権利の中の特許権、実用新案権、意匠権およびBに属する商標権は、権利の発生・取得のために国(特許庁長官)に対する出願~登録の手続きを要し、産業財産権(かつての工業所有権)と呼ばれます。Aに属する権利の中の著作権は、権利の発生・取得のために出願~登録その他の一切の手続きを要しないもので、産業財産権ではありません。

2 知的財産権法とは
 Aに属する法律として、特許法、実用新案法、意匠法、著作権法などがあり、Bに属する法律として、商標法などがあります。なお、Bに属する法律として、不正競争防止法があります。同法は、知的財産に関する具体的権利を定めるものではなく、出願~登録その他の手続きの有無にかかわらず、「営業活動における標識」の不正な使用などを規制するもので、知的財産権法の側面を有するものです。(続く)