ポルノ映画論(中)

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「巨乳若奥様…」などのDVD作品は、発売に先立ち、映像ソフト業界の自主審査機関である日本ビデオ倫理協会(「ビデ倫」)が、わいせつ性がないという合格判定を行ったもの。1972年、映像関連業界の自主審査機関の1つである「映倫」が事前審査で合格とした4本の映画について、製作関係者および映倫審査員がわいせつ図画公然陳列などの罪で起訴された前例があり(いわゆる「日活ロマンポルノ」事件)、全員が無罪となっています。このため、「巨乳若奥様…」事件の弁護人は、「ビデ倫が、本件DVDについてわいせつ性はないと判断した事実」を無罪とすべき理由の一つとして主張。しかし、東京地裁判決の2011年9月6日判決は、 「ビデ倫は会員であるメーカーからの要望を受けて、次第に、審査基準等を緩和させるとともに、実際の審査においても、結果として、審査結果に利害関係を有するメーカー会員の意向に沿うかたちで…モザイクレベルに関して、従前の基準や運用を大幅に緩和する方向に運用が変わっていったことが認められる。このような、本件DVDが審査された当時における審査の実態等に照らすと、本件DVDがビデ倫の審査に合格しているとしても、その事実をもって健全な社会通念を推し量る一事情として考慮することは相当でないというべきである。(なお、少なくとも本件DVD審査当時のビデ倫は、前記日活ロマンポルノ映画事件控訴審判決で示された『映倫』とは、審査の実態などの面で信頼性等の基礎となる事実が大きく異なっており、同判決における映倫と同等に評価することは到底できない。)」 と判断して、この主張を退けています。 「巨乳若奥様…」が、いわゆる「ハード・コア・ポルノ」であることはすでに述べました。思想性・芸術性の要素のない「ハード・コア・ポルノ」について、これまでの裁判所の対応は厳しく、女性の陰部を露骨に撮影したカラー写真をポルノショップで販売した事案について憲法21条違反などの上告理由を退けた上告審判決(最高裁第1小法廷昭和58年10月27日集刑232号461頁)で、団藤重光裁判官は次の補足意見を述べています。 「もともと、単に人の性欲を刺激するだけの意味しかないような(ハード・コア・ポルノ)写真は、性質上、むしろ性具の類と異なるところはないのであって、それは広い意味での表現には相違ないが、『表現の自由』をいうばあいの特殊な意義における『表現』には該当しないというべきであろう。」

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