積み重なった検閲機関ー映画に対する規制(3)

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「中国映画の『熱狂的黄金期』」(劉文兵・2012年 岩波書店)は、中国において1980年代に行われていた映画検閲の実態を詳しく報告しています。

これによれば、当時の検閲は、脚本に対する検閲と出来上がった作品に対する検閲の二重構造からなり、映画産業の指導に当たる政府機関「電影局」、各撮影所の検閲部門、撮影所所在地の地方政府という検閲機関が幾重にも積み重なって存在する点が特徴です(p154)。

脚本に対する検閲は、各映画撮影所の企画部によって編集・発行される映画化前脚本の掲載誌について行われます。第1次の検閲権限は、各撮影所に委ねられ、撮影所は、検閲をパスした脚本のコピーと企画書の概略を「電影局」と撮影所所在地の党政府に提出することが義務付けられています。

出来上がった作品に対しても、各撮影所での第1次検閲、「電影局」での第2次検閲(試写室での上映→修正指示→撮り直しなどによる修正)が行われます。「電影局」だけの判断で決められない場合には、上級機関である文化部(わが国の文部科学省)へと移送され、それでも決められない場合、党の指導部の主要なメンバーに最終的な裁可を仰ぐこともあります(p163)。

「電影局」は、映画の題材に応じ、少数民族を描いた作品は民族問題委員会に、学園ものは教育部門にというように、他の政府機関に代理審査を依頼することがあり、それが事実上検閲のハードルをさらに押し上げる結果となっている…。このような重層的な映画検閲制度は、映画業界の自主機関としての映画倫理委員会(映倫)による「レーティングシステム」しか持たない日本人にとっては、想像を絶します。

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