怒り、対立しながら…-「12人の怒れる男」(シドニー・ルメット監督 1957年)(3)

「12人の怒れる男」(シドニー・ルメット監督 1957年)(2)

これに対し、無罪説は、8番の陪審員1人だけで、その理由も、I just want to talk. つまり有罪の確信が持てないから、よく話し合おうという程度のもの。しかし、有罪にせよ無罪にせよ、少なくとも刑事事件の評決は全員一致であることを要するという制約のため、暑い夏の午後の評議が、有罪説の11人にとっては嫌々ながら始まります。

8番の陪審員は、まず、珍しい彫刻の柄を持つ凶器の「飛び出しナイフ」とまったく同じものが6ドルの質流れ品で売られていたと実物を披露。次いで、評議室内での再現実験により、歩行の不自由な老人がベッドから起きて現場が見える場所まで移動するには45秒を要すること(証言では10秒)が判明。高架線のそばで3日間仕事をした経験のある6番の陪審員(塗装職人)は、高架線を列車が通過する際の激しい騒音で、老人には「殺してやる」という叫び声が聞こえたとは思えないという。9番と8番の陪審員は、メガネなしで出廷した女性証人の鼻にメガネ跡があったことを思い出し、通過列車ごしに18メートル先の現場が見えたという証人が、現場を凝視するために不可欠なメガネを掛けていなかった可能性を指摘する…。

幼年期をスラムで過ごし「飛び出しナイフ」に精通する5番の陪審員は、「飛び出しナイフ」でとっさに攻撃する場合の刺し傷の形態について、重要な疑問を提起。陪審員たちは、ときに殴りあいの寸前まで感情を露骨に表し、怒り、対立しながらも、結果的には、証言や物的証拠のあらゆる疑点を一つずつ冷静にチェックします。

午後7時までに、無罪説は11人となる。有罪説は、高校のフットボール・コーチだという3番の陪審員だけ。その陪審員も、最後に、不仲な不良息子への悪感情が被告人の少年を有罪とする無意識の根拠であったことを認め、ついに全員による無罪の評決が成立する…。(続く)

(*1)ヘンリー・フォンダ主演映画でも、 Penguin Classicsの演劇脚本でも16才とされているが、19才とするバージョンもある(調査中)。

「12人の怒れる男」(シドニー・ルメット監督 1957年)(4)