圧倒的多数の有罪説-「12人の怒れる男」(シドニー・ルメット監督 1957年)(2)

「12人の怒れる男」(シドニー・ルメット監督 1957年)(1)

被告人は16歳(*1)の少年(ヒスパニック系の混血か)。父親に殴られたことを恨みに、深夜、アパート2階の自宅で父親を「飛び出しナイフ」で刺殺したとして起訴されている。法廷の陪審員の前で目撃状況を克明に述べた検察側証人の1人は、鉄道高架線を隔てた近所の45歳の女性で、通過する列車ごしに自宅の窓から犯行を目撃したと証言。もう1人は、同じアパート1階の高齢の1人暮らし男性。深夜、「殺してやる」という階上の叫び声と人が倒れる物音を聞き、アパート出入り口に駆け寄ると、顔見知りの少年が逃走するのを見たと述べている。弁護人は「無能」な国選で、有効な反対尋問を行っていない(ただし演劇でも映画でも法廷シーンは一切なし…)。
このため、議論に入る前の最初の評決では、有罪説が11人という圧倒的多数。その理由は、2人の証言が具体的で信用できる、父親に殴られたという動機がある、凶器の特異なデザインのナイフが現場で保全されている、少年は犯罪の温床のスラム出身だ、少年はアリバイとして犯行時には映画館にいたというが映画の題名を言えなかった…などさまざまです。陪審員の1人は、当夜のニューヨーク・ヤンキースのナイトゲームに間に合うよう、とりあえず多数説に加担したようです。

「12人の怒れる男」(シドニー・ルメット監督 1957年)(3)