勅令とは何か-勅令は生きている(上)

勅令とは,実に古めかしい言葉です。これは大日本帝国憲法8条1項又は9条に基づき天皇が発する命令のことを言います。

戦後,日本国憲法が制定され,勅令も過去のことになったかと思いきや,実は勅令は生きています。

まずは,勅令の基礎知識からです。勅令には緊急勅令と(狭義の)勅令があります。
8条1項に基づく勅令は緊急勅令のことです。憲法で法律事項とされている事項も対象とできますが,国会の承諾が必要で,国会が承諾しない場合は将来に向かって効力を失います(8条2項)。
狭い意味での勅令は9条に基づく勅令のことです。この勅令は法律事項以外の事項を規定できます(以下ではこの勅令を話題とします。)。

勅令は天皇が発する命令ですが,戦前も日本の国政は立憲君主制なので,天皇の裁量で勅令を出すのではなく,政府の判断で勅令を発することになります。勅令は法律と同等の効力があります。つまり,行政が,国会を通さず,法律の委任もなく法律と同等の効力のある法令を定めることができるので,民主主義の観点からは非常に問題の大きな制度でした。

勅令の名称には「令」が付きます。有名な勅令としては,国民徴用令,小学校令,大学令などがあります。

勅令は戦後も活躍しました。ポツダム宣言の受諾によって連合国の指示を実施する必要があったので,天皇は(もちろん政府の判断で)「『ポツダム』宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件」(いわゆるポツダム緊急勅令)を発しています。ポツダム緊急勅令に基づいて,物価統制令等の命令が発せられています。これらの命令を創傷してポツダム命令と言います。

勅令は生きている(下)