社外取締役体験記

今年も上場企業の株主総会開催日が集中する6月の第4週が過ぎて1週間が経過しました。筆者は、4年前に親子で上場する企業の子会社の社外取締役に就任しましたが今年の株主総会で再任され、3期目を迎えます。 社外取締役は、日本では、2012年度の上場企業全体(1676社)のうち、54%の割合で採用されています。米国では、サーベランス・オクスレー法に基づくニューヨーク証券取引所上場規則により、上場企業の取締役の過半数が独立取締役であることが強制されています。 筆者が、社外取締役として日々考えていることについて、感想を述べたいと思います。この見解はあくまで個人のものであり、私が所属している企業のものでないことを予め附言します。

会社には様々な株主がいます。機関投資家から個人株主まで、その顔ぶれは多様です。株主の中に、アクティビスト(Activist)と呼ばれる株主がいることがあります。一般的にはその正体はファンドですが、対象企業の業績等に対して、厳しい目線を持つ株主でもあります。これらのアクティビストが株を保有する動機は、いうまでもなく、保有株式に対するリターンの極大化にあります。企業業績が悪い経営者に対して、その姿勢を質し、株主価値の増大を求めるもので、怠慢な経営者を監督し、企業経営の透明性を高めることで、他の株主の利益にも資することから、一般的には、この活動は大いに推奨されるべきものです。 長引いたデフレにより、多くの企業は可能な限り間接経費等を削減して、営業利益を確保しているのが実際の現状と思われます。働くサラリーマンの現在の給与は、平成7(1995)年より低いという統計のデーターがあります。株主の側から言えば、ROEなどの数値は、企業の収益性をはかる意味で重要ですが、その数値ばかりに目を奪われて、企業の収益性を支える様々な要素(例えば、人材育成費用や従業員に対するインセンティブが加味された給与体系の構築、経営のスピードを図る施策等)については多くの場合無関心です。これは、従業員主権と株主主権のどちらに比重を置く会社の経営が会社の収益につながるかという問題にも繋がります。 かつて、高度成長期の日本は、製造業が中心にあり、従業員の共同体としての帰属意識とその時代の経済環境が相まって、高い生産性と株価の上昇が実現でき、日本的経営が功を奏しました。しかし、バブルがはじけ、経済的環境も変わり、これまでの銀行を経由する資金調達から、資本市場からの資金調達へと変わり、次第に配当性向を重視する企業運営が求められるようになりました。

 現在、アベノミクスにより円安、株高の局面になり、次第に企業の設備投資等も上向いて来たと報道されています。 私は、企業は内部留保を狭い意味の設備投資ではなく、人材育成を始めとする広義の企業投資を行うべき時期に来ていると考えます。物や設備は、経済的環境の変化で容易に陳腐化(シャープのパネル投資やパナソニックのプラズマテレビ投資がその好例です)しますが、広義の企業投資は、例え一時的に企業収益が落ちても、やがて収益の回復に貢献するものと思われます。 長期的な観点からは、株主主権と従業員主権は、実際は表裏一体のもので、短期的な観点から株主主権のみを強調するアクティビストの立場にはやはり違和感を禁じ得ません。