三姉妹(上)

最近見た、中国の映画の話をもう一つ(ただし、裁判に関するものではありません)。それは、ワンピン(王兵)監督作品の長編ドキュメンタリー「三姉妹―雲南の子」です。

映画の舞台は、雲南省北東部・標高3200メートルの80戸・470人の寒村。羊などの放牧に頼る村民1人の年間純所得は約25,000円(数字は映画パンフによる)に過ぎません。 私は、この5年ほど、年に1度、雲南大学の文化人類学教室の指導による少数民族の村々を訪ねる旅に参加し、家畜と雑居する農家に寝袋で分宿したこともあります。しかし、同じ雲南省でも、観光地に近く、歓迎の少数民族ダンスが披露され、体験宿泊を受け入れるような模範的な村と、この映画の舞台の山村とは格段のちがいがある。村外に広がるかつての棚田は荒れ果て、省内の世界遺産・「元陽梯田」(1200メートルの高低差で営農中の、文字どおり「一目千枚」の棚田)の片鱗すらない。高倉健主演のドラマ映画「単騎千里を走る」の雲南ロケ地となった貧村も、この山村に比べればはるかに「まし」のようです。

三姉妹の母は数年前に家出して帰らず、父も出稼ぎで年に1回しか戻らない。10歳の長女・インインが小学校に不定期に通いながら、6歳の次女・チェンチェン、4歳の三女・フェンフェンの母親代わりとなっている。家畜の世話と家事に追われる長女の日課の一つは、妹たちにたかっている無数の虱を爪でつぶすこと。余談ながら、ワンピン監督は、3千メートルを超す放牧地を飛ぶように走る長女を追っていて高山病になったとか…。

三姉妹(下)に続く