映画に描かれた中国の裁判(1)

2011年にわが国で公開された中国映画「再生の朝に―ある裁判官の選択」(リウ・ジェ監督)は、困難な状況下で良心を貫く田舎町の裁判官を淡々と描く佳作です(ベルリン映画祭・銀熊賞受賞)。

主人公は、中国北部の小さな町の小さな裁判所に勤務する裁判官ティエン。毎日、古びた鉄筋アパートから自転車で裁判所に通う初老の男で、うだつの上がらないヒラの地方公務員という感じです。日本人のもつ「裁判官」のイメージとはほど遠く、おそらくは、共産党とのなんらかのコネで、法律の専門教育や司法試験を経ずに「裁判官」の職を得たものと思われます。

この映画の理解のために、中国の司法制度の現状に簡単に触れておきます。

数年前から、私は、同年の友人たちと現代中国の法制度について小さな研究会を持っています。そのメンバーが、2011年、上海市の裁判所や弁護士会を訪問することを思い立ち、公の団体を通さず、在日の中国律師(弁護士)を通して計画を進めました。しかし、外国人の私的な裁判所訪問や法廷傍聴は全面的に禁止されていて、外国人弁護士が各地の弁護士会を訪問するには、実に6ヶ月以上も前に中国外務部(外務省)に質問事項などを添えて申請し、許可を得なければならないことが判明。結局、訪問先は、上海市内の日本企業を顧客とする法律事務所と大学法学部に限定されました。もちろんそれなりの成果はありましたが…。

映画に描かれた中国の裁判(2)に続く