離婚コーディネートサービスのニーズはあるか?

Wevorceは,アメリカ発の離婚コーディネートサービスです。夫婦がWevorceに離婚のコーディネートを申し込むと,Divorce Architecs( テッククランチでは「離婚設計士」と仮訳されていますが,離婚コーディネータという訳はどうでしょうか。)が二人の間に立ち,財産分与,養育費,親権等について話合いを仲介します。少しひねりがあるのは話合いの過程をWevorceのソフトウェアがガイドする点で,これが売り物のようです。 サービスの主眼は離婚費用のコスト削減です。アメリカでは,夫婦双方に弁護士が付いた場合,離婚費用が高額になるのに対し(テッククランチの記事では3万ドル),Wevorceでは1万ドルと安く上がる点にニーズがあるようです。

日本の弁護士である私から見ると,Wevorceのサービスは,裁判所の離婚調停そっくりに思えます。裁判所の離婚調停では調停のコーディネーターである調停委員男女2名が夫婦の間に入り,二人の意見を調整して行くという過程は,Wevorceのサービスとほとんど同じです。離婚調停では裁判官が調停の方向性をコントロールしているので,ソフトウェアによるガイドというひねりも目新しく感じません。 ここで日本の離婚制度を紹介します。離婚には,協議離婚と裁判離婚があります。協議離婚は夫婦が離婚で合意して離婚届を市町村に届ける方式,裁判離婚はその名のとおり裁判所で行う離婚のことです。 日本の離婚は,9割が協議離婚で,裁判離婚は1割程度です。協議離婚に弁護士が関与することは少なく,また,裁判離婚の中でも離婚調停には弁護士が付かないことが多いです。このブログの記事によれば,弁護士の関与率は離婚調停の4分の1,夫婦の一方だけに付くことを考えると1割強と推定され,全離婚事件における弁護士の関与率は1%とのこと。

弁護士を選任しない限り,協議離婚に費用は掛かりませんし,離婚調停の費用も多くて数万円です。弁護士関与率1%の日本と,多くのケースで双方に弁護士が付くアメリカとでは離婚に掛かる費用が違いすぎて,Wevorceのニーズを感じられません。

ニーズがあるとすれば,離婚調停では時間が掛かり過ぎる点と調停委員の質が一定ではない点でしょうか。ただ,夫婦の感情を冷ます意味で,時間が掛かることにも長所はあり,離婚コーディネーターの質も担保されるのか分からず,この点のニーズも大きくないように思います。

名誉毀損ツーリズムとフォーラムショッピング

最近,名誉毀損ツーリズムという言葉を知りました。
http://en.wikipedia.org/wiki/Libel_tourism

イギリスの名誉毀損法制が被害者に著しく有利なことから,外国からわざわざイギリスの裁判所まで行って名誉毀損の訴訟を起こすことを指しているようです。
イギリスの名誉毀損法制は日本と似ているとのことなので,(おそらく)原告は名誉毀損の外形的事実を指摘すればよく,被告が名誉毀損の免責要件(日本では,①事実の公共性,②公益目的,③真実性の3要件)を主張・立証しなければならないとしているのでしょう。

さらにイギリスでは,敗訴者が原告の弁護士費用まで負担するので,被告の不利益は甚大です。
http://www.comit.jp/uk/cost.htm

なお,日本では訴訟費用の負担で済みます。訴訟費用は大きな額にはならず,費用対効果の関係で,実務上は,請求しないままのことも多いです。

つまり,被告は名誉毀損の訴訟を提起された時点で経済的に高いリスクにさらされることになります。
こうした法制の場合,敗訴リスクが多少でもあるならば,被告は,判決まで戦うよりも,早期の和解を選択するのが合理的です。
以上の事情からイギリスは名誉毀損の被害者に著しく有利と言われるようです。

名誉毀損ツーリズムもフォーラムショッピング(自分に有利な判決が見込める裁判所に訴訟を提起すること。)の一つです。
アメリカなどでは,分野ごとに有利な裁判所が決まっているようで,どの裁判所を選択するかは勝敗に重大な影響があるようです。

フォーラムショッピングが可能になるのは,訴訟提起できる裁判所(これを管轄裁判所といいます。)を多数選択できることが条件です。日本では管轄裁判所の選択肢が広くないので(民事訴訟法訴訟4条~13条に規定があります。),あまりフォーラムショッピングの重要性は強調されていません。

それでもフォーラムショッピング的考慮をしないわけではありません。
たとえば,交通事故の損害賠償請求事件の場合,管轄裁判所は,原告の住所地,被告の住所地,交通事故の発生地を管轄する裁判所になります。
専門部がある東京地裁,名古屋地裁,大阪地裁で使用する損害賠償の基準が異なっています(東京は赤い本,名古屋は黄色本,大阪は緑の本)。損害賠償の基準は単純にあてはめればいいようでいて,あてはめ方にもちょっとしたノウハウがあり,あまり詳しくない基準で訴訟を戦いとは思いません。そのため,管轄裁判所に東京地裁があればそこに決めますし(事務所も近いですしね。),東京地裁がなければ慣れ親しんだ赤い本を使っている裁判所か交通専門部のある裁判所を選びます。