日本への投資は大歓迎? - 入管手続と会社設立の変更点

日本は,外国への投資には積極的でも外資の導入には消極的なのでしょうか?歴史を見てみると、必ずしもそうとは言えないようです。

ペリー来航以降,貿易会社・銀行が横浜・長崎に支店を作り(横浜に商社のジャーディン・マセソン,長崎にオランダ銀行(の前身のオランダ貿易商会など。),明治以降は,シティバンク,スタンダードオイル,アメリカンタバコ,シンガーソーイング,GE,アームストロング,ジーメンス,ヴィッカース,ダンロップ等が次々と進出しています。
現在の日本の大手企業も元をただせば,外資系という例が多数見られます。電機業界では過半が外資系でした。たとえば,日本初の民族資本と外国資本による合弁会社であるNECは,ウェスタンエレクトリック(現在のアルカテル・ルーセント)が54%出資していました。東芝は,東京電機と芝浦製作所が合併した会社ですが,いずれもGEとの合弁会社です。

戦前の日本では技術力・資本力が欧米企業に比べ決定的に劣っており,重工業・電機・化学等の分野において外資導入が不可欠といってよい状況でした。

積極的に外資導入を図った戦前に比べ、戦後は国内企業が日本経済の中心でした。その要因は,第二次世界大戦で多くの欧米企業との資本関係が切れたこと,戦時中の軍需産業化を経て国内企業の市場支配力が決定的なものとなったこと,国の閉鎖的な市場政策などです。

しかし,バブルの崩壊による長期不況を脱却するため,国は対日投資を積極的に歓迎し始め,入国管理行政も対日投資をサポートするようになっています。

こうした流れの中で,今年の春に二つの政策変更がありました。
1 代表取締役の住所について
これまで,会社の代表取締役のうち最低一人は日本に住所を有しなければ,会社設立等の登記申請は受理されないという取扱いでした。このため,外国在住の人・法人が日本で会社を設立する場合,日本人又は在日外国人をパートナーとする必要がありました。
この制限が平成27年3月16日に撤廃され,代表取締役の全員が在外外国人であっても会社設立等の登記申請が受理されることになりました。つまり,日本人等のパートナーは必須ではない,ということです。

2 経営管理ビザについて
これまで投資経営ビザと呼ばれていたビザが,経営管理ビザとなり,その内容も若干変わりました。
特色は4か月の在留期間が設けられたことと,法人で事業を行う場合にその法人を設立しようと準備しているときにこの4か月の在留期間が与えられることになったことです。

もっとも,背景事情が分からないと以上の改正の意味が分からないと思います。

起業家が法人で事業をして,投資経営ビザを取得しようとする場合,法人を作ってからでないと投資経営ビザはおりませんでした。

また,外国人が法人を作る場合は二つの問題がありました。
一つは代表取締役の一人の住所が日本になくては行けないという規制がありました。もう一つは資本金の払込みに銀行口座が必要で,日本人又は在日外国人でないと銀行口座は作れないという問題です。
上記問題をクリアするために,従前は,代表取締役の一人を日本人等のパートナー役として会社を設立し,それから他の代表取締役の外国人についてビザを申請するという手法を取られることが多かったのですが,信用できる日本人等のパートナーを見付けることがなかなか難しく,手続的負担が大きかったのです(なお,その他,口座のある外国銀行の日本支店に口座を作るという方法がありました。)。
そこで,国は対日投資を増やすために,代表取締役全員が外国在住でもよいとし,さらに,在外外国人が会社設立前でもビザを取れるようにしたのです。
したがって,発起人が銀行口座を持っていれば,代表取締役全員が外国在住の会社を作ることができるようになりました。また,銀行口座を持っていなくても会社設立前にビザを取得できるようになったので,そのビザで来日し,住民票登録をして銀行口座を作ることで会社を設立できるようになりました。

それでは,日本人等のパートナーがいなくても会社設立に問題がないか? といえば全くそんなことはありません。
経営・管理ビザで起業しようとする場合の要件は,
1 常勤雇用者2名又は資本金500万円(常勤雇用者1名+資本金250万円もOK)
2 事務所の存在又は確保
の二つです。
問題は2の方で,日本の取引慣行では,日本に住民票登録のない者に対して,事務所用不動産を賃貸することは通常ありません。したがって,事務所用不動産を購入するような資金力があったり,提携先等の特別のコネクションがあったりしない限り,やはり,日本人等のパートナーが必要ということになります。
この事務所要件が緩和される気配はないので,今のところ,今回の政策緩和は対日投資歓迎の掛け声以上のものではない,ということになりそうです。

なお,事務所が準備できる場合であっても,会社設立や在留資格取得には資格証明証等の煩雑な書類の準備が必要です。日本人であっても手に余る手続なので,外国人であればなおさら実際の手続は専門家に依頼するのが無難でしょう。

社外取締役体験記

今年も上場企業の株主総会開催日が集中する6月の第4週が過ぎて1週間が経過しました。筆者は、4年前に親子で上場する企業の子会社の社外取締役に就任しましたが今年の株主総会で再任され、3期目を迎えます。 社外取締役は、日本では、2012年度の上場企業全体(1676社)のうち、54%の割合で採用されています。米国では、サーベランス・オクスレー法に基づくニューヨーク証券取引所上場規則により、上場企業の取締役の過半数が独立取締役であることが強制されています。 筆者が、社外取締役として日々考えていることについて、感想を述べたいと思います。この見解はあくまで個人のものであり、私が所属している企業のものでないことを予め附言します。

会社には様々な株主がいます。機関投資家から個人株主まで、その顔ぶれは多様です。株主の中に、アクティビスト(Activist)と呼ばれる株主がいることがあります。一般的にはその正体はファンドですが、対象企業の業績等に対して、厳しい目線を持つ株主でもあります。これらのアクティビストが株を保有する動機は、いうまでもなく、保有株式に対するリターンの極大化にあります。企業業績が悪い経営者に対して、その姿勢を質し、株主価値の増大を求めるもので、怠慢な経営者を監督し、企業経営の透明性を高めることで、他の株主の利益にも資することから、一般的には、この活動は大いに推奨されるべきものです。 長引いたデフレにより、多くの企業は可能な限り間接経費等を削減して、営業利益を確保しているのが実際の現状と思われます。働くサラリーマンの現在の給与は、平成7(1995)年より低いという統計のデーターがあります。株主の側から言えば、ROEなどの数値は、企業の収益性をはかる意味で重要ですが、その数値ばかりに目を奪われて、企業の収益性を支える様々な要素(例えば、人材育成費用や従業員に対するインセンティブが加味された給与体系の構築、経営のスピードを図る施策等)については多くの場合無関心です。これは、従業員主権と株主主権のどちらに比重を置く会社の経営が会社の収益につながるかという問題にも繋がります。 かつて、高度成長期の日本は、製造業が中心にあり、従業員の共同体としての帰属意識とその時代の経済環境が相まって、高い生産性と株価の上昇が実現でき、日本的経営が功を奏しました。しかし、バブルがはじけ、経済的環境も変わり、これまでの銀行を経由する資金調達から、資本市場からの資金調達へと変わり、次第に配当性向を重視する企業運営が求められるようになりました。

 現在、アベノミクスにより円安、株高の局面になり、次第に企業の設備投資等も上向いて来たと報道されています。 私は、企業は内部留保を狭い意味の設備投資ではなく、人材育成を始めとする広義の企業投資を行うべき時期に来ていると考えます。物や設備は、経済的環境の変化で容易に陳腐化(シャープのパネル投資やパナソニックのプラズマテレビ投資がその好例です)しますが、広義の企業投資は、例え一時的に企業収益が落ちても、やがて収益の回復に貢献するものと思われます。 長期的な観点からは、株主主権と従業員主権は、実際は表裏一体のもので、短期的な観点から株主主権のみを強調するアクティビストの立場にはやはり違和感を禁じ得ません。